海外向けサイトは翻訳では届かない。日本企業のサイトが海外で弱く見える理由
日本語サイトを英語にしただけのページが、なぜ海外の顧客に響かないのか。情報密度、信頼のつくり方、フォーム設計まで、東京と米国の両方で作ってきた立場から具体的に書きます。
海外向けのサイトについてご相談をいただくとき、すでにあるものはたいてい「日本語サイトをそのまま英語にしたもの」です。翻訳の品質が悪いわけではありません。文法も自然で、用語も間違っていない。それでも問い合わせは来ません。
理由は言語ではなく、構造のほうにあります。
結論:直すべきは翻訳ではなく、情報の並べ方と信頼のつくり方
- 1画面に載せる情報量。日本語で成立する密度は、英語にすると読めなくなります
- 信頼を担保している要素。代表挨拶と会社概要で信頼を作る構造は、海外ではほぼ機能しません
- 行動導線。電話と名刺交換を前提にした設計は、海外の検討プロセスと噛み合いません
- フォームの項目。ふりがな、郵便番号、必須の会社名は、そこで離脱を生みます
- URL構成とhreflang。ここを間違えると、そもそも英語圏の検索結果に出ません
なぜ直訳では読めなくなるのか
漢字は1文字が運ぶ情報量が多い言語です。英語なら数語を要する内容が、2文字で収まることも珍しくありません。つまり、日本語で「ちょうどよく詰まっている」画面をそのまま英訳すると、面積が2倍から3倍に膨らみます。
そこで多くの場合、フォントサイズを落としたり、行間を詰めたりして無理やり収めることになります。そうやってできあがった英語ページは、読みにくいというより「情報が整理されていない会社」に見えます。日本語では誠実さのシグナルだった情報量が、そのまま移すと逆の意味になってしまう。
この情報密度自体は、日本の側の欠陥ではありません。チラシの文化がそうであるように、日本では情報を尽くすことが丁寧さの表現として機能してきました。東京の街を歩けば、同じ論理が都市規模で展開されているのがわかります。密度は失敗ではなく、そういうコミュニケーションの様式です。
ただ、その様式は市場ごとに違います。移植できないだけの話です。
日本で信頼を作っている要素が、海外では効かない
日本の企業サイトでは、代表挨拶のページが標準的に置かれています。装飾ではなく、正式な自己紹介として機能しているからです。商談が挨拶から始まる文化の中では、これを省いたサイトは一段飛ばしているように見えます。
会社概要も同じで、所在地、設立年、資本金、従業員数、代表者名が並んでいることに意味があります。これがないと「実体のある会社なのか」という疑問が立ちます。
海外向けのページでは、ここがほぼ効きません。代表者の挨拶を最初に読みたい海外の担当者はまずいません。彼らが冒頭で知りたいのは「誰のどんな課題を、どう解決するのか」であり、それが数秒で伝わらなければ戻るボタンが押されます。
代わりに信頼として機能するのは、次のようなものです。
- 取引先や導入企業のロゴ
- 抽象的な形容ではなく、数字で示された成果
- 料金の考え方が、少なくともレンジで書かれていること
- 担当する人間の顔と経歴。日本の「弊社」より、海外では「誰がやるのか」が重く見られます
- セキュリティや各種コンプライアンスへの対応状況。BtoBでは特に
面白いのは、この項目の多くが日本語サイトでは省かれがちだということです。料金を書かない、担当者を出さない、実績を数字にしない。国内では通用しますが、海外向けページで同じことをすると、情報が足りない会社として扱われます。
慣れは摩擦を減らす。ただし市場ごとに違う慣れ
以前、楽天市場のモバイル版トップページで、商品リストの説明テキストを削るA/Bテストをしたことがあります。括弧や記号やセール表記が並んでいて、商品そのものとは関係のない文字列が多かった。減らせばすっきりするはずでした。
コンバージョンが落ちて、テストを中止しました。
ユーザーはあのテキストを、こちらが想定していた意味では読んでいませんでした。読んでいたのではなく、見慣れた形かどうかを確認していた。情報として役に立っていなくても、それが消えるだけで判断に迷いが生まれ、クリックが鈍る。
この「慣れが摩擦を減らす」という性質自体は、どの市場にもあります。ただし何に慣れているかは市場ごとに違います。日本のユーザーを安心させた見慣れた形は、海外のユーザーにとっては単なるノイズです。逆もまた同じで、余白の多いミニマルな1CTAのページは、日本のBtoB担当者には「情報が足りない」と映ります。
実務で必ず起きる問題
- テキスト量の増加によるレイアウト崩れ。ボタンのラベル、ナビゲーション、表の見出しが特に壊れます。英語版を想定していないコンポーネントは、だいたいここで破綻します
- 書体。日本語フォントと欧文フォントでは、同じウェイト指定でも見た目の太さと印象が変わります。英語版だけ妙に野暮ったく見える原因はここにあることが多いです
- フォーム項目。ふりがな、郵便番号による住所自動入力、必須の会社名と部署名。海外の見込み顧客にとっては入力できない、あるいは入力する気にならない項目です
- 行動導線。日本では電話番号と問い合わせフォームが中心ですが、海外では日程調整ツールでそのまま打ち合わせを押さえる導線が一般的です
- 時差と営業時間の書き方。日付形式も、年月日の順で書くと誤読されます
URL構成とhreflang
英語版をどこに置くかは、後から変更するとコストが大きい部分です。サブディレクトリ(example.com/en/)、サブドメイン(en.example.com)、別ドメインの3択になりますが、多くの日本企業にとってはサブディレクトリが無難です。ドメインの評価を分散させずに済みます。
そのうえで、日本語版と英語版の対応関係をhreflangで明示してください。これがないと、英語圏の検索結果に日本語ページが出たり、逆に英語ページが国内の検索に出たりします。
それから、これが見落とされがちなのですが、英語圏で実際に検索されている語は、日本語キーワードの直訳ではありません。国内向けページの見出しをそのまま英訳すると、誰も検索していない言葉が並ぶことになります。英語側のキーワードは、英語側で調べ直す必要があります。
現実的な線引き
全ページを英語化する必要はありません。むしろ、中途半端に全部訳したサイトより、5〜8ページに絞って本気で作ったサイトのほうが成果が出ます。
最初に用意すべきなのは、トップページ、サービスや製品の説明、実績または導入事例、会社情報、そして問い合わせ。ここが英語圏の読者向けに設計されていれば、残りは後から足せます。
そして、機械翻訳をそのまま出すくらいなら、英語ページは作らないほうがましです。読む側はブラウザの自動翻訳を使えますし、それは無料です。わざわざ自社のドメインに置く以上、自動翻訳より良いものである必要があります。
海外向けサイトのご相談
スカイディアは東京に本社を置き、シリコンバレーやボストンで経験を積んだメンバーが在籍しています。日本語のサイトと英語のサイトの両方を、それぞれの市場の読者に向けて設計できる体制です。今の英語ページを見せていただければ、どこが効いていないかを具体的にお伝えします。グローバル展開に向けたサイト設計について。
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